ノーベル賞受賞経済学者 (2003.2)

昨年11月に開催されたあるフォーラムで、私はノーベル経済学者のマイロン・ショールズ博士の基調講演の後を受けて講演する機会に恵まれました。博士は、金融オプション取引のブラック=ショールズ理論で有名な方です。

博士の講演で最も印象的だったのは、思考過程が明確に伝わってくることと、説明されている項目が、プレゼンテーション全体の中でどの位置にあるのかが大変把握しやすかったことでした。博士はMindManager(※)というツールを駆使してご自身の思考過程をまとめ、発表されていました。このツールが実際にうまく使われているのをはじめて目の当たりにし、考えをまとめ、モデル化し、それを人に伝えるのに優れた道具であると実感しました。講演を通じノーベル賞受賞者の頭の中をのぞくこともできて面白かったです。

講演後のパーティーで博士と話す機会がありました。「ファンド運用に関して、どのようにして貴重な情報を集めるのか?」という私の問いに対し、博士は、「自分のモデルと違ったことが現実に起こったとき、私はその偏差をうめる情報を探すようにしている。そこで得るものが自分にとって貴重な情報である。」とお答えになりました。

常日頃から自分のモデルを頭の中に入れておくこと、目の前で起きていることが自分のモデルどおりか否かを見極めること、偏差がある場合にはそれを引き起こしているものは何かという視点を持ち続けること、これらをもってはじめて、ショールズ博士の言わんとされる「貴重な情報」が自分のものになるということでしょう。

ショールズ博士に倣ってMindManagerを使いながら、私も自分のアイディアのモデル化を行っています。